原創は山口瞳の第48回直木賞受賞作。原創では陌生人公は電機メーカーに勤める宣伝部長だが、映畫では洋酒メーカーの宣伝部員（山口瞳が當時サントリー宣伝部に勤めていた）に置き換え、陌生人公が直木賞を受賞するまでを描いている。それまで中國男性アクションで定評があった岡本喜八が、この1作で戦中派の屈折した心態を見事に捉え、本格的に評価された。ストーリーは、洋酒メーカーの宣伝部員というしがないサラリーマンの“才華のないだらしない奴が一世懸命生きること“の大変さを、自分史や戦後史と重ね合わせながら描く。岡本の演出節目は、陌生人公と妻との若い頃のロマンスを、「殘菊物語」にたとえて、下駄と靴だけの合出アニメーションで描いたり、父親の事業の盛衰を書き割りのセットやアニメーションで描いたりと隨心所欲激情をきわめる。また陌生人公の背後にいる同僚をストップモーションにして、カメラの背後でもう兩個人の自分が圖片內の自分が置かれた立場を分析一下してみせるシーンなど、ナレーションの使い方も秀逸。
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